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  • 2018.10.01

脱税事件の捜査 ~検察の視点~

査察調査後、国税庁と検察庁で告発勘案協議会(告発の可否の事前協議)が開かれ、(a)在宅事件案件か(b)身柄事件案件かに分けられます。
告発されて、起訴される割合は、約69.3%、有罪判決率は99.9%です。(H29査察白書による全国データ)
申告者が否認している場合、逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合(関係者の口裏合わせ)などは、(b)身柄拘束事案に該当し、身柄が拘留され、拘留満期の22日までに、国税庁と検察庁での合同起訴が決定されます。
告発後に、不起訴(起訴猶予)となることは極めて異例で、平成282016)年12月と平成292017)年1月に1件ずつ東京・名古屋国税局が刑事告発した事件、東京国税局では平成31991)年の1件しかありません。

 

起訴されると、関係者は、検察による取り調べを受けます(半年以上)。検察は、税務調査の時点で押収した必要な書類やデータなどの物的証拠を押さえているため、関係者それぞれの供述と物的証拠との整合性を調べ、下記の点をポイントにして取り調べが行われます。
検察に対する調査対応の態度、供述態度、申告・納税の状況などの犯行後の状況も取り調べの対象となるようです。

 

①ほ脱(脱税)所得・ほ脱税額の補足と特定
②偽りその他不正の行為の特定
③行為に及んだ行為者の特定
④行為者におけるほ脱の意思

 

①ほ脱税額

PL立証法、BS立証法を用いて、実際の所得額・税額が再現されます。PL立証法では、本来残っているはずである所得(=溜まり)の解明が重要です。
10年くらい前までは、脱税額が1億円未満の案件は告発されないケースも見うけられましたが、近年では、1億円未満でも告発の基準の対象となっています。
参考までに、平成29年度では、1件当たりの脱税額の平均は8,300万円です。

 

②偽りその他不正の行為の特定
偽りその他不正の行為とは、「ほ脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能若しくは著しく困難ならしめる偽計その他の工作(最高裁昭和42118日)」をいいます。
具体的には、会計帳簿の改ざん(二重帳簿)、実態の取引のない虚偽の取引などが含まれます。
つまり、仮装・隠ぺいの事実がなく、単に経理ミスによるものや、認識不足によるもの等、「偽りその他不正の行為」がないと立証できれば、告発の可能性は低くなるということです。
なお、ほ脱の意思があれば、無申告の場合でも「偽りその他不正の行為」に該当します。
法人税等約3,000万円を脱税した無申告事案では、20154月に告発、201512月に在宅起訴され、20164月に懲役10月(執行猶予3年)、罰金700万円の有罪判決が言い渡されています。

 

③行為者の特定
実際に「偽りその他不正の行為」を実行した者のみならず、それを指示した者も共謀(共同正犯)として処罰されます。
たとえば、脱税の方法を指南した者も含まれます。
共謀が認められる3要因としては、「共謀するメリット」、「関与の有無の程度」、「事後の隠ぺい工作」を勘案して共同正犯としての事実認定を行います。
脱税を指南し、法人税約48,000万円を脱税した者らの事案では、平成282016)年9月に、裁判所は「所得隠蔽の周到さが際立っており、犯行は非常に悪質。顧客との間で何度も詳細な口裏合わせを重ねたりするなど、証拠隠蔽工作も甚だしい。」と指摘し、A被告に懲役5年と罰金15000万円、B被告に懲役3年、C被告に懲役26月(執行猶予4年)の有罪判決を言い渡しています。

 

④ほ脱の意思(故意)
ほ脱の故意とは、申告所得額を超える所得金額の存在の認識のことをいいます。逆に言えば、申告所得を超える所得金額の存在を認識できていないことが立証できれば、起訴することは困難でしょう。

 

⑤その他量刑について
量刑についてのご参考までに、近年の実際の判例では、ほ脱額によって下記のような判決が下されています。
1,000万円~5,000万円 6月~1年(執行猶予)
5,000万円~  1億円 1年から16月(執行猶予)
ほ脱額が2億円を超えたり再犯の場合、執行猶予なしの実刑判決が下されることもあるようです。
また、上記の懲役刑のほか罰金刑も課され、その罰金の額は、所得税や法人税の場合、ほ脱税額の2030%となっていますが、税目によっても異なるようです。
相続税約49,000万円を脱税した事案では、平成292017)年1月に懲役3年(執行猶予4年)、罰金800万円の有罪判決が言い渡されています。

 

査察調査の対象が7期分に及び、7期分の修正申告書の提出、延滞税・重加算税等の納付をしていても、懲役刑の対象になる期は、3期分であることが多いようです。これは、法律で明文化されているものではありませんが、検察の実務運営上、7期分は手間がかかることなどの理由によるとのことです。

 

秋は税務調査のシーズンです。
査察調査は無予告でガサが入りますが、通常の調査では、申告書に税務代理権限証書を添付している場合、顧問税理士に調査の連絡が入ります。
しかしながら、現金売上が大きいところなどへは無予告で調査が入ることもあります。
税務調査でご相談のある方は、御茶ノ水の大向税務会計事務所へご連絡ください。