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コロナによる財政悪化で、移転価格税制の調査が活発に

コロナの影響による企業の財政悪化を背景に、移転価格税制の調査が活発化している。日本側のセグメント損益がマイナスの営業利益となる企業が多いため日本側課税当局からの課税リスクが高まっている。

だが、現時点では、日本側課税当局のよる移転価格課税リスクよりも東南アジア諸国側の課税当局による移転価格課税リスクに警戒が必要だ。東南アジアの各国の工場が一定の営業利益を稼得できていれば、東南アジア各国側の課税当局による移転価格課税リスクは低いが、営業利益がマイナスとなると格段に移転価格課税リスクが高まる。コロナの影響により東南アジアの工場の稼働率が落ち込み、日本側のセグメント損益のみならず、東南アジア各国の工場側のセグメント損益もマイナスの営業利益となった日系企業が多く、取引単位営業利益法(TTM)による稼得利益2%程度を相手国側に与えることができなくなってきている。

 

こういった特殊な経済環境では、過去にも活発な移転価格課税が行われた歴史がある。2009年のリーマンショックや、その後の円高による経済環境下では日本側、相手国側双方で移転価格課税が多く行われた。取引価格を平時の価格としたままでは、東南アジアの製造国側、中国などの販売国側、本社の所在国側、それぞれのどこかの国のセグメント損益又は、全ての国のセグメント損益がマイナスとなる。その場合、マイナスとなった国の課税当局はこれまで確保できていた税収が確保できないこととなり、移転価格調査を行うこととなる。

 

日本側の移転価格調査に対しては、特殊な経済環境下における市場を統計的に反映させた合理的なベンチマーク分析などの経済分析の経験があるため、ある程度反論、交渉ができる余地があるが、その合理的な経済分析による反論は東南アジアのローカルの税務当局には通用しないことが多い。今後も東南アジア現地側での移転価格課税リスクは高いままであり、二国間の相互協議により二重課税の状態を排除するしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

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