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移転価格調査対応シリーズ-その1

今回から、移転価格調査対応シリーズを不定期に開始します。
移転価格調査の対応は通常の税務調査の対応とは全く別物です。
通常の税務調査のつもりで対応していると、経営に大きなダメージを与えることとなるため、経理責任者としては、最低限の知識、対応が求められるところです。
まず、今回は、移転価格調査の具体的な流れについて、次の3段階、9項目に分けて、調査官の視点から説明していきます。

 

■第1段階: 「状況把握の段階」
①準備調査
この段階では、調査官は過去の調査資料、別表17(4)などの税務申告資料から会社の全体像を把握していきます。

②臨場調査
調査官は、資料提出依頼の内容と徴収事項を記録・管理していきます。

③情報収集・分析
調査官は、帝国データバンクの情報や、ホームページ、商品毎のパンフレット、徴収事項などから情報分析を行い、移転価格課税ができるかどうか検討を行います。

この第1段階で、所得移転の蓋然性が高いと判断されるか、どうかが大きなポイントです。
所得移転の蓋然性が高いと判断されれば、次の段階にて、調査官と議論を積み重ねていくこととなります。

 

■第2段階: 「問題の抽出段階」
④問題点整理
調査官は入手資料を見直し、問題点や課税を行う取引を絞り込んでいきます。

⑤是否認判断
調査官は、事実関係や分析内容を取りまとめ、是否認の判断を行います。

⑥調査官との議論
機能・リスクについての事実認定、経済分析等について、納税者と調査官で議論を行います。
この段階では、すでに税務調査官は課税の意思を固めていることが多いので、調査官の意見に対する反論書を合理的に作成し、提示していかないと、確実に課税されることとなります。
調査官の経済分析の上をいく、精密かつ、芸術的なベンチマーク分析のスキルが必要です。

 

■第3段階: 「課税の段階」
⑦中間意見書の提示
調査官が公式に中間意見書を提示し、課税案を納税者に提示してきます。
この段階での中間意見書は、名前こそ中間意見書ですが、ほぼそのまま最終意見となるケースが多いです。
この段階で反論書を作成するときの留意点としては、相手国との相互協議を意識し、英語による反論書(Position paper)を作成を意識し、さらに相手国の移転価格税制の執行状況を確認する必要があります。

⑧最終提示
公式に当局から更正の内容について、提示が行われます。
この段階では、調査官(課税当局)の中では結論が出ていますので、数値のチェックのみで議論は不要です。

⑨更正処分
数値にミスがなければ、そのまま移転価格課税が行われます。

 

マスコミ対応、納税資金の資金繰り、国内訴訟手続きの準備、留保、相互協議の申し出についての検討を行い、二重課税の排除に向けて戦略を立てる必要があります。
相手国の税務当局との交渉も必要となるため(自社で直接行うよりも専門家に対応依頼した方が効果的です。)、相手国側にも移転価格税制を熟知した税理士事務所に依頼する必要があります。

 

次回は、「移転価格調査の特徴」として、課税リスク、調査期間、データベース等について取り上げます。

 

ご質問・ご相談のある方は、日本で数少ない移転価格調査対応の税理士、池袋の大向税務会計事務所へご連絡ください。

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