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移転価格調査対応シリーズ-その2

前回、移転価格調査の全体的な流れについて、記載いたしました
今回は、移転価格調査が通常の税務調査と異なる点、なぜ移転価格調査の対応には専門家が必要なのか?について、紹介したいと思います。

 

①調査期間について

移転価格の調査は、通常の税務調査と異なり、1年から2年間に渡ることも多く、長期化します。

なぜ、長期化するのかというと、通常の税務調査が照合を基本とした帳簿調査であることに対し、移転価格調査は、機能、リスクの分析、ベンチマーク等の経済分析が行われるためです。

また、納税者と税務当局の分析方針、分析結果が異なれば、互いに議論を行うこととなるためです。

議論の過程で提出した書類との矛盾を突かれることもありますので、提出する書類には、細心の注意が必要となります。

経理担当者は、移転価格調査の期間中は通常業務に加えての作業量となりますので、相当な負荷となります。

 

② 調査担当者について

移転価格調査は通常、国税局の国際税務専門官と調査官の2人ペアで行われます。

統括官が要所、要所で臨場しますが、この統括官は税務署でいうと副署長レベルとなります。

税務署レベルの調査(特官調査を除く)とは、調査官のレベルが異なります。

また、税務署の調査とは異なり、交渉による課税金額を半額にしたりということは行われません。

課税するか、しないか、All or Nothingの世界です。

 

③ 調査資料について

通常の税務調査と異なり、通常の帳簿の精査は行いません。

調査対象会社のパンフレット、ホームページ、製品情報、同業他社情報等を中心に情報収集され、調査資料としてまとめられていきます。

その際に、切り出し損益の情報、商品・製品ごとの仕切り価格情報、為替負担の方法等について、情報提供を求められることとなります。

グローバル移転価格文書や、日本版の移転価格文書、相手国の移転価格文書があれば、その提出も求められることとなります。

ここで提出した資料をもとに、議論が行われることとなるため、移転価格の決定方法と提出資料に整合性があるか否かについて、資料の提出には専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

 

④ 経済分析について

市場分析、機能分析の結果に基づいて、移転価格を決定するための経済分析が行われます。

経済分析の際には、公表されているデータベース(有価証券報告書、ORBIS、OSIRIS、ORIANAなど)によって行われることが一般的ですが、税務当局しか知りえない情報、いわゆるシークレットコンパラブルによって課税されることもあります。

税務当局がシークレットコンパラブルにより課税できる場合は、調査官の要求した資料を提出しない場合等のみ、と限定されていますので、納税者としては、シークレットコンパラブルによる課税を避けるため、適正な資料を提出し、ベンチマーク分析結果を提示していく必要があります。

なお、ベンチマーク分析とは、調査対象取引と類似する取引を行っている企業の財務数値を公表されているデータベースから一定数抽出し、統計的手法(四分位レンジ)を用いて独立企業間の価格のベンチマークを行うことを言います。

このベンチマークの分析手法には、データベース、経験、センス、芸術性が求められるため、専門家のアドバイスに基づき行うことが必要です。

 

次回は、調査後の手続きについてを予定しています。

 

 

ご質問・ご相談のある方は、日本で数少ない移転価格調査対応の税理士、池袋の大向税務会計事務所へご連絡ください。

 

 

 

 

 

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