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脱税指南コンサルの刑事告発

時代が変わっても、必ずこの手の手法が繰り返される。脱税指南の内容や、脱税の提案に乗ってしまう企業・個人には一定の傾向があるように思う。以下、2020年11月の名古屋国税局査察案件である。

 

<脱税会社及び脱税額の概要>

名古屋のコンサルティング会社(破産手続き中)が5900万円脱税行為を行った。

さらに、このコンサルティング会社から脱税指南を受けた3社も、次のとおり脱税行為を行った。

 

東京のインターネットネット広告会社が1億6000万円脱税

東京の通信販売会社が2189万円脱税

名古屋の電気工事会社が1700万円脱税

 

不正なほ脱所得金額が1億円を超えているのは、上記のうち、無申告ほ脱額が1億6000万を超えるコンサル会社と、3億1000万をほ脱したインターネット広告会社の2社であり、あとの2社については1億未満の脱漏所得額で立件されている。ほ脱所得額が5000万未満の水準で立件基準を満たさないために立件を免れた会社もあると思われる。

 

<脱税スキームの概要>

コンサルティング会社は、節税提案や資金繰り相談とうたって、高級ホテルのラウンジでセミナーを開催し、「弊社とコンサルティング契約を結べば、そのコンサルティング料が経費計上できるので節税できる」として顧客の集客を行っていたのことであり、もうこの段階で税理士法違反であり、国税当局も情報を入手しているものと思われる。

 

コンサルティング契約を締結した顧客に対して、圧縮したい所得金額をコンサルティング料として振り込ませて、20%程度の手数料を差し引いて現金返金するという手口とのことですから、古今東西、昔からよくある手口で使い古されたやり方での脱税スキームといえるだろう。

 

このコンサル会社は脱税した所得を、外国株の投資やフェラーリ、遊興費で使ったとのことであり、これも脱税所得の典型的な使い道といえる。とくに遊興費に使ったと供述している金額のうち、査察及び検察が追いかけれない金額がある程度出てくるはずである。このような悪質な脱税コンサルティング会社であれば、査察による告発まで予測したうえで、自己破産後にそこに貯めておいた不正所得で再起を図るケースが多い。

 

<暗号資産の使用>

上記の古典的な脱税スキームのほかに、このコンサルティング会社はビットコインとイーサリアムの仮想通貨取引を行う個人投資家に対しても脱税指南を行っていたのことであるが、このケースでは、暗号資産の価格が変動が大きいため、脱漏所得額が特定できず、名古屋国税査察部は告発を見送っているようである。

 

個人投資家30人程度に対して、「仮想通貨取引と同額のコンサル料を仮想通貨で支払えば、税務申告する義務がなくなる」として虚偽の助言による脱税指南行為を行い、コンサル料として10億円程度の暗号通貨を受け取り、そのまま仮想通貨として自身で運用していたようだ。

さらに、質が悪いのはこのコンサル会社から虚偽の助言を受けて確定申告を行わなかった投資家が「コンサル会社から脱税行為ではない、との説明を受けており意図的に所得を隠したつもりはない」と故意ではない旨、と自身も被害者である旨を主張しており税務訴訟を検討中とのことのようだ。重加算税について争うのだと思うが、そんな租税正義に反する税務訴訟を引き受ける弁護士や税理士はいるのだろうか。

 

脱税の手法や脱税者の主張を聞いていると、私が税理士を始めたころの20年以上前から全く変わっていない。

今後もこういった悪質な脱税は時代を超えて繰り返されていくのであろう。脱税した人間が偉くなる社会には住みにくいので、悪質者な脱税者に対して、より一層の厳選な調査、より厳しい刑事責任を国税庁及び検察に期待したい。

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