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漁船の圧縮記帳の廃止 平成29年度税制改正

漁業経営者の事業計画策定のため漁船の買換えの圧縮記帳を検討しようと条文を確認したところ、平成29年度税制改正にて「日本船舶から日本船舶への買換えに係る措置の見直し」により漁船が除外されていました。

 

漁業経営は水揚高が不安定であり、将来予測が困難であるため、事業年度ごとに税引前利益の水準が大きく変動します。そのため、単年度ごとに課税所得計算では税負担が平準化せず、漁業経営を行うに当たって過大な税負担が発生し必要な設備投資が困難となることがあります。

 

こういっった事業年度ごとの税負担を平準化させるために導入された税制の一つが、旧船の譲渡益の課税を繰り延べることができる漁船の買い換え特例です。漁船の法定耐用年数と実際の耐用年数には差があるため、一般的に漁船の買い換え時には売却益が発生します。この売却益に課税するということは新船に対する設備投資額に売却代金の全額を投資できないことを意味します。すなわち税引き後売却額(売却代金の7割程度)しか新船の建造費に充てることはできなくなります。

 

漁業経営において事業計画を策定する際に老朽した船舶の設備更新を折り込むのであれば、船舶の売却の前に欠損金を積み立てておかないと売却益に対して税金が発生し、経営体力を削ることとなりますので注意が必要です。

 

漁船以外の日本船舶や土地などについては政策的に買い換えの圧縮記帳による課税の繰り延べ措置を認めていることに比べ、この国の水産業界のためになる措置法規定であると評価していた税制であったので非常に残念な、衰退する日本の漁業に拍車をかける税制改正であったと思います。

 

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