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コンサル会社顧問先50社に所得隠し指南

読売新聞のスクープ記事で、千葉県市原市のコンサルティング会社の顧問先約50社に対して東京国税局が一斉調査を行い、7年間20億円の所得隠しを指摘したとの報道があった。

 

所得隠しのスキームは単純であり、コンサル会社の顧問先の赤字企業に数パーセントから十数パーセントのマージンを渡し、架空の請求書を黒字の顧問先である建設関係会社に対して発行してもらうという赤字会社を使った架空外注費の手法である。

 

通常の脱税案件と違い、使った赤字会社がペーパーカンパニーではなく、実在の赤字会社であるということに特徴があり、利害関係者が複数になることから情報が漏れやすくあまり使用されないスキームである。それを国税OBが指導して行ったところが本事案のスキームの特徴である。

 

国税OBが絡むコンサル会社はその数パーセントから十数パーセントのマージンのうち一部を謝礼として受け取っていたとのことである。このコンサル会社及びコンサル会社の顧問先の税務申告は元税務署長も含む国税OB3人が所属する税理士法人が請け負っていたという。

 

東京国税局としては身内案件となるが、なぜ20億円と巨額かつ悪質な案件であり、国税OBが指南した大型脱税及び脱税ほう助事案であると認識することもできる事案である。査察は脱税者に対して一罰百戒として処断しているが、これは国税OB税理士に対する一罰百戒案件として処理すべき事案ではないかと思う。

顧問先50社に対して所得漏れ金額が20億ということなので、一社当たりに換算すると所得漏れ金額4000万ということになり、告発基準以下という形式判断したのであろうか。

または死因は公表されていないがコンサル会社元社長が税務調査開始後に死亡したとのことであり、強制調査が行えなかった(又は行わなかった)ため査察案件とならなかったのであろうか。

 

本事案では、脱税などの懲戒事由に加担した税理士の常とう手段であるが、所得隠しに加担したとされるOB税理士3名は税理士会から処分が為される前に税理士資格を返上し廃業している。読売新聞はこの点についても問題提起報道しており、国税OB3名が税理士会から調査、処分、氏名公表はされることはなく、またしばらくすれば税理士として復帰することができることまで指摘している。

 

本報道により国税OB税理士であるという身内意識により、脱税事案であるにも関わらず査察が動かなかったり、脱税ほう助のお咎めもなしということ風に世間から見られれば、真っ当に税理士業を担っている税理士の信用も落ち、ひいてはこの国の根幹を担う税理士制度の信用も失うことになる。

報道により身内の不祥事が表に出た以上、税理士全体の信用を貶めることがないように、国税庁税理士監理室及び東京国税局査察部においては、身内だからこその一層厳しい処分を行うことで公平性のある業務執行を行う組織であることを示して頂きたい。

 

 

 

 

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