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借入金で取得した賃貸不動産の評価-控訴棄却

令和2(2020)年6月24日、被相続人が相続開始直前に借入金で取得した賃貸用不動産の相続税評価額について、納税者側が通達に基づく評価をし、税務署が財産評価基本通達6項に基づく国税庁長官の指示による評価を認めた原判決を維持し、納税者の控訴を棄却しました。

借入金で相続財産を圧縮するこの節税手法は基本的には合法的で、通達に基づいた方法であり、一般的に浸透している手法です。
今回のその一般的に浸透している方法が否認されたことから、すでにこの方法を選択している方も注意が必要です。

東京高裁によると否認されるポイントは次のとおりです。
・鑑定評価額(時価)と通達評価額(申告した金額)との間で3-4倍の差は大きい
・相続税の負担を減少させることを被相続人や相続人が知っていた
・減少した課税価格が大きい(6億円超の現預金⇒2,826万円の不動産)
・相続の2-3年前に10億円を借入れ不動産取得、相続後9カ月で不動産(一部)売却

こういった事例をみていると移転価格調査に近いものを感じます。
時価(独立企業間価格)という実態のない値を基に税務署側の見解が主導で課税が行われること、
納税者側の主張は通りづらいこと、
経済合理性、所得(財産)移転の蓋然性などがポイントになること
に類似点を見ることができます。
これが、国際取引案件であれば、移転価格紛争のように相手国も黙ってないでしょうが、相続の財産評価に関しては日本の税務当局の意見が通るので、今後は極端な財産圧縮、かつ、5年以内のキャッシュ化は避けた方がよいでしょう。

税金のご相談のあるかたは、お気軽に御茶ノ水の大向税務会計事務所にお問い合わせください。

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